A380の機内へ
優先搭乗が始まり、筆者と他2組は真っ先にゲートをくぐる。マレーシア航空のA380は2階がビジネスクラス、1階の最前方がファーストクラス、後ろがエコノミークラスという配置になっているので、一緒にゲートをくぐった大富豪の皆さんとはここでさようなら。などと思っていたら、一緒にビジネスクラスの方へ。とはいえ、向こうはバーゲン運賃ではあるまい。僻み根性はどこまでも続くのである。
さて、そんな冗談はさておき、今回の席は7A。ビジネスクラス前方コンパートメントの席である。予約時点では5Kを予約していたが機材変更でこの席になった。
画像でご覧の通り、何の工夫もない2-2-2の配置で、とにかくゆったりとしている。
最近流行の個室感はまったくない開放的な座席であるが、狭い空間の中に如何にしてフルフラットの席を効率よくたくさん並べるのかという工夫の固まり、ということは、あちこちに無理のあるシート配列と違い、すべてがゆとりある状態で、しかも、これでフルフラットになるのだ。A380ならではの配置だろう。
窓際にもこのように荷物収納があって、重量制限10kgと書かれている。収納しているカバンはiPadに携帯、文庫本と大きめの財布が充分に入れられるサイズで、写真では分かりづらいが、このカバンの他に13インチのMacBookも入っている。
他にも、モニターの下やシートの横にもポケットがあるので、機内で使うものは色々と身の回りに出しておきたい人でも満足できるだろう。この辺りも、やはり、スペースをふんだんに使えるA380ならではだろうか。
テーブルの広さも十二分にあり、ご覧のように13インチのノートパソコンを広げても、まだ隣に飲物やデザートを置くだけの余裕がある。しかも、隣の席と共有のセンターテーブルがあって、ティーカップはそちらに置いている。
最後の写真は帰路の6Kの席のものだが、フルフラットにしていて、右下に見える紺色の固まりはブランケットにくるまった筆者の足だ。何を見て欲しいかというと、前方のモニターが据え付けられているフラットな壁だ。フラットであるということは、スタッガード配列やヘリンボーン配列のシートによくある、前の座席の下に食い込むようなオットマンがないのだ。しかし、フルフラットシートである。
ということは、つまり、シートピッチが座席をフルフラットにできるほどに確保されているということだ。同じマレーシア航空のA350と比べてみると、A350のファーストクラスのシートピッチが79インチ、ビジネスクラスが44インチなのに対して、A380のビジネスクラスは74インチ。他の航空会社でもファーストクラスで80インチ程度が普通なので、シートピッチだけを見れば、このビジネスクラスはファーストクラスにも遜色ないということになる。
もちろん、シート幅、収納、個室感などは本物のファーストクラスとは比べるべくもないが、これだけ広い空間を機内で独り占めできるのは快適そのものであり、今回は往復とも隣が空席だったので、隣の人がフルフラットにして寝てしまったらどうやって通路に出るのかという、機材変更が判明したときに抱いた懸念も杞憂に終わった。
これだけのゆったり感はもうファーストクラスにでも乗らない限り味わうことができない。ということは、筆者にはもう縁がないであろうということだ。その去就が注目されているマレーシア航空A380。最後に希有な経験をすることができた。