JALが入札アップグレードを導入

JALのプレミアムエコノミー

入札アップグレードとは

今回、JALが国際線に導入することになった入札アップグレード制度とは、その名の通り、予約客が希望額でアップグレードに入札して、その入札金額に応じて落札、つまり、アップグレードされるかどうかが決まるというものである。海外の航空会社でも導入されていることが多く、たとえば、筆者もキャセイパシフィック航空とマレーシア航空でそれぞれ入札したことがあり、後者では実際にアップグレードに成功している。

この制度に共通する特徴は、落札できなかった場合は1円も請求されず、元の航空券のまま搭乗するということ、ラウンジや優先チェックインなどのサービスはアップグレード後のクラスに応じたものが受けられること、マイルとそれに基づくステータスポイントは元の予約クラスのままであること、エコノミークラスからプレミアムエコノミーへのアップグレードが入札の対象で、プレミアムエコノミーの設定のない便や航空会社ではビジネスクラスへのアップグレードとなる、この4点であろうか。

アップグレードの対象クラスについてはキャリアによって多少異なると思われるが、少なくとも、ビジネスクラスからファーストクラスへの入札アップグレードは聞いたことがない。

JALでの具体的な流れ

JALの場合、まず出発の1週間前に入札に応募できる人に対してメールで案内が来る。キャセイは予約完了画面ですでに入札できたような記憶がある。

メール記載のURLから、自分が希望する入札額や、入札できた場合に支払うクレジットカードなどの情報を入力する。入札できるのは出発48時間前までで、1度入札した内容も48時間前までなら変更したり取り消したりできる。キャセイとマレーシア航空の例では、入札画面で金額を入力すると、その金額で入札が成功しそうかどうかの度合いを教えてくれるので、それを見ながら入札金額を決めればよい。入札アップグレードのシステム提供がキャセイやマレーシア航空と同じ会社なので、JALでも似たような形式になるものと思われる。

そして、出発の24時間前までに入札結果がメールで通知されてくる。入札金額の高い方から順に落札されてゆくが、同額の場合は元の予約クラス、JMBステータス、入札日時の早さなどで決定されるという。プレミアムエコノミーの空席がすべて入札アップグレードの対象となるわけではない。
 

入札アップグレード制度のメリット

入札制の最大のメリットは何かというと、エコノミークラス航空券がほとんどの予約クラスで対象となることだ。これまでマイルでアップグレードできる航空券となると、予約クラスの高いもの、つまり、エコノミーといえどもかなり価格の高いものばかりであった。それがおそらくは予約クラスQや特典航空券でも入札できるものと思われる。

JALの入札制の案内ページにあるFAQでは、対象外運賃として「団体・ツアー運賃やパッケージ旅行」としか書かれていない。つまり、バーゲン運賃で購入して入札アップグレードでプレミアムエコノミーにというのが可能であるということだ(もちろん、入札に成功すればだが)。

また、誰でも参加できるので、これまで上級クラスに関心のなかった人たちにも裾野を広げられるという点は、航空会社にとっての大きなメリットとなるだろう。お得意様の新規開拓というわけだ。

これまでのマイルによるアップグレードでは1〜2万マイルほどが必要だったが、たまにしか飛行機に乗らない人には到底貯まらないマイル数であろうし、エコノミーからプレエコへのマイルによるアップグレードというのは、元の運賃が高すぎて現実的な選択肢ではなかった。

マイルを何らかの方法で大量にため込んでいる人には、最初から安いチケットではなくプレエコを買ってもらい、マイルでビジネスクラスにアップグレードしてもらう。そうでない人にはバーゲン運賃からでも構わないので、入札で有償アップグレードしてもらうというように,うまく棲み分けというか、二つの方向付けがなされていると思う。
 

当日アップグレード

さて、プレミアムエコノミークラスには空港で搭乗当日に代金を支払う当日アップグレードという制度が以前からあった。当日に空席があればチェックインカウンターで申し込めるもので、距離によるが2〜4万円程度である。筆者は使ったことはないが、カウンターに当日アップグレードのお知らせが置かれているのはよく見かける。

今回の入札アップグレード制度の導入に伴い、この当日アップグレードがどうなるのか、今のところは廃止されるようなアナウンスはないので併存であろうか。そうすると、この金額が入札額の一つの目安となるかもしれない。当日アップグレードより高い金額を入札する意味がないので、それ以下にするというのも一つの考え方であろうし、それより安い金額は誰もが入れてくるレンジなので、確実性を狙ってみるというのも戦略の一つだ。
 

導入記念キャンペーン

6月30日までの期間限定で、今回の入札アップグレード導入記念キャンペーンが行われている。本来、このシステムではマイル積算に関してはアップグレード前の本来の予約クラスのものが適用されるのだが、キャンペーンとしてアップグレード後のクラスの積算率にしてもらえるというものだ。プレエコにアップグレードなら100%、ビジネスなら125%である。もちろん、FOPもそれに連動する。

ということは、プレエコの設定のない路線(もしくは機材)で、安いエコノミーチケットからビジネスにアップグレードすれば、FOP単価をかなりよくすることができるかもしれない。めぼしい目的地で色々と計算してみたい衝動に駆られるが、残念ながら筆者は予定されていた出張が全部キャンセルになってしまったので、当分出かける予定もないのだ。

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