機内での時間つぶしをどうするか
長時間のフライトの場合、どうしても機内で退屈になってしまうので、なんらかの暇つぶし対策は必要である。
一般的には、機内エンターテインメントで映画を見るとか、はたまた寝てしまうといった辺りが王道であろうが、たまたま見たいと思う作品がかかっていないとか、機内で寝つけない、あるいは、時差ボケしないように寝てはいけないというような場合もあるだろう。
そんなとき、筆者は基本的に何かを読むことにしているのだが、機内誌と新聞だけでは間が持たないので、何冊か本をいつも旅行カバンに入れっぱなしにしていて、それを機内に持ち込むようにしている。
機内に持ち込むのは紙の本
普段は蔵書スペースの問題と持ち歩きの利便性から、軽い読み物に関しては電子書籍で買えるものはなるべく電子書籍にしている。端末はKindleもKoboもどちらもeインクタイプのものを持っている。
それでも機内に持ち込むのは紙の書籍である。eインク液晶なら目の疲れも変わらないし、バッテリーの残量についてもそんなにシビアではない。あくまでも気分の問題と、シートポケットに適当に突っ込める気軽さであろうか。
持ち込む本は決まっている
さて、私が飛行機に乗るときに持って出かける本は決まっている。必ず、古典である。若かりし頃は『今昔物語』本朝世俗部で決まりだった。講談社学術文庫の旧版が分冊の数が多く(=1冊あたりが薄い)、現代語訳もついていて愛用していた。調子に乗って『源氏物語』にも手を出したが、当たり前の話だが、たまにしか乗らない飛行機の機内限定では読み終わるわけもなかった(昔は今よりも乗る機会が少なかった)。
その後、旅先で偶々見つけた « Anthologie de la littérature latine » ラテン語の撰文集になった。これは注釈は詳しいが、現代語訳はなしというハードスタイル。
なぜ、この二冊かというと、それなりに面白くてそれなりに退屈だからである。面白すぎて巻置くを能わず、一晩中読み通して寝不足になってしまっては本末転倒だからである。
ラインナップを刷新
ただ、2冊ともボロボロになってしまったし、ラテン語の訳なしというのもしんどくなってきた。パソコンなど持ち歩いていなかった頃はペーパーバックの小さな辞書も持ち込んだりしてたのだが、そして、今ならiPhoneに辞書は入っているのだが、それでも一々参照するのが面倒になってきた。
そこで4月から8月まで毎月のように出張が続くのを機に、機内持ち込み用書籍の刷新を図ってみた。いや、本屋であれこれ見ただけであるが。
選んだのは角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズから『宇治拾遺物語』と、Loebの " A Loeb Classical Library Reader " の2冊である。
角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズ
角川の文庫には「ビギナーズ」じゃない方の古典シリーズもあるが、そちらは現代語訳が巻末にまとめられているので、ビギナーズの方がよい。文法事項などの語釈はないが(その分すっきりしている)、現代語訳・原文・物語の解説と並んでいる。
後は判型が少し大きくなるが、教科としての古文の大学受験参考書にも、本文、詳しい語釈、文化背景の解説、現代語訳が見開きにまとまっているものがある。学習用だけのことはあって、文法解説だとか頻出ではない語の語義なども載っていて、古語を読み慣れていないうちは重宝する。基本的な語彙があれば辞書がなくでもどうにかなる。
ただ、受験参考書は誰が見ても受験参考書だと分かるようで、「お勉強されているのですか?」と聞かれて「いや、暇つぶしに」と答え、お互い気まずくなったことがあるので、カバーか何かをかけた方がいいかもしれない。
Loeb Classical Library
Loeb Classical Library(ローブ古典叢書などと言われている)というのは、すでに100年以上の歴史があり刊行数が500点を超える有名なギリシア語・ラテン語と英語の対訳シリーズで、そのリーダー、つまり、撰文集である。ギリシア語とラテン語がほぼ半分ずつ、ホメロスから始まって聖ヒエロニムスの書簡で終わる。
撰文集には注釈が一切ついておらず、ギリシア語は註なしだと個人的には辛いなあという感じなのだが、まあ、もう寝なくてはというタイミングで、アリストテレスでも開けばちょうどいいかもしれない。ちなみに、アリストテレスからは『詩学』が選ばれていて、今、試しに読んでみたら寝落ちしそうになった。
写真の左から2冊目はまたもや調子に乗って買ってしまった『源氏物語』、右端がここ数年の旅の友であった « Anthologie de la littérature latine » である。