時差が1時間半のミャンマーへ
クアラルンプール空港から他の東南アジア諸国へ飛ぶと、少し不思議な感覚にとらわれる。東西にはさして広くない東南アジア地域なのに、各都市とクアラルンプールとの間には時差が1時間かそれ以上もあるのだ。しかも、不思議なことに、ほぼ同経度にあるタイはおろか、マレーシアよりもずっと東にあるベトナムやカンボジアよりもマレーシアの方が時間が進んでいるのだ。
時差の理由はマレーシアの標準時にある。マレー半島だけではなく、ボルネオ島にも広がっている国土に合わせて、マレーシアが標準時を制定しているため、他の東南アジア諸国よりも標準時子午線が東にあるのだ。タイやベトナムの標準時子午線はマレー半島南端の少し東を走っているが、マレーシアやフィリピンが採用している子午線はマニラのすぐ西になる。
なにしろ、ボルネオ島の東端は経度でみれば厦門と同じ、台湾ともほんの数度しか違わないのである。東西に長い日本でも、明石に合わせてある標準時のせいで、九州の西の方では遅くまで明るいのだが、同様にマレーシアの西端の方にあるクアラルンプールだと低緯度の割には日没がずいぶんと遅く感じられたりする。
今回の目的地ミャンマーは協定世界時との時差6時間半、クアラルンプールを出発すると緯度にしてわずか5度差で1時間半も時計が戻るのである。日本との時差は2時間半である。このタイムゾーンは世界中でミャンマーしか採用しておらず、子午線もミャンマーの上を走っている。
ミャンマー通貨チャットへの両替
クアラルンプールからヤンゴンまでのフライトは2時間10分ほど、慌ただしいというほどではないが、ウェルカムドリンク、機内食、食後のお茶とのんびり過ごせばあっという間である。離陸が10分ほど遅れ、そのまま10分延着、空港は第2ターミナルですべてがコンパクトにできており、e-Visaによる入国審査もあっという間に終わり、バゲージクレームでも両替をしている間にすでに荷物が出てきていた。
ネットで調べると、円からの両替はできない場合が多いので、米ドルに前もってしておくのがよいと書かれていることが多いが、少なくともバゲージクレームにある両替所では1万円札のみだが両替可能であった。ただし、レートは対ドルよりも悪い。端数をばっさり切られるという感じである。
一応、米ドルも200ドルほどは持っていたが、それで足りなかった場合、追加で両替するのにヤンゴン市内で円が使えるかどうか不明だったので、とりあえず日本円から両替しておいた。もっとも、後になって考えてみれば、ホテル代はカード払いなので、それ以外で200ドルも2日間に使う、つまり、1日の滞在費が1万円近くになることなど、ミャンマーの物価を考えればあり得ないのであった。
あまつさえ、いちばん高額になったルーフトップバーの飲み代をカードで払っているのだ。結局、両替したチャットの3分の1以上が余ってしまった。
The Rose Garden Hotel の Bamboo Executive Room
さて、ヤンゴンは初滞在なので特定の目当てのホテルもなく、ホテル予約サイトで評判・価格・場所などを比較検討しながら、ローズガーデンホテルというところにしてみた。
場所としてはヤンゴン駅の北東、動物園の裏手にあたるので、ヤンゴンの中心ど真ん中よりは少し外れたところになるが、ヤンゴンではどこに行くにしてもどうせタクシーを使うしかないし、市内の主立った場所に歩いて行けなくもない。地理的な利便性は少しだけ下がるが、それ以外は最高のホテルかもしれない。
見た目もこのようになかなか立派で、日本人には少し気恥ずかしいぐらいだが、ホテル内もそれに劣らず豪華な造りで、今回泊まったバンブー・エグゼクティブ・ルームは調度品など室内の色んなところで竹細工が使われているなど、非常に洒脱な内装で、広さも清潔さも問題なし、アメニティもロクシタンとまことに申し分のない部屋であった。
予約するタイミングにもよるが、このバンブー・エグゼクティブにあと少し足すだけで、インドカリンスイートに泊まることができる。次回はそちらにしてみようかとも考えている。
駆け足のヤンゴン・リポート
さて、ここから先は諸事情があって写真がほとんどない。撮ることは撮ったのだが、今手元にないのでアップできないのだ。というわけで、ここからはたまたまスマホでも撮影していたものだけを。
まず、今回のヤンゴン滞在における根本的な失敗として滞在日程が挙げられよう。日曜の昼について火曜の午前発という、実質1日半だけという日程の短さもそうだが、主たる観光日が月曜日だという点が問題であった。博物館が軒並み休館日なのである。さらに、ボージョー・アウンサン市場という観光客にとってショッピングのメインともなりそうな場所まで、月曜日は休みなのだ。
博物館は日曜午後に駆け足で見学、月曜は主に寺院を見て回るということになった。天気がよければNLD本部にも行ってみようと思っていたのだが、雨期の真っ只中でタクシーで前を通っただけ、ボージョー・アウンサン市場は定休日に気づいたのが当の月曜になってからだったので、やむなく割愛。
やはり、初めて行く国にたったの1日半ではやり残しばかりである。チャットもたくさん余っていることだし、再訪するいい口実にはなるが。今年の10月1日から期限付きではあるが、日本人は観光ビザが免除されることに決まったようなので、ますます行きやすくなるし、マレーシア航空が到着するターミナルもその内に施設の整ったターミナル1に移ることがアナウンスされている(ただし、時期不明)。
手元にある写真から、まずはカフェで食べたカレー。メニューも写真に撮ってあるのだが、手元にないので詳細は不明だが、どれも美味しく、独特な苦味やえぐみなどもないので、誰にでも食べやすいものであった。
食べたのはRangoon Tea Houseというダウンタウンの中心部、旧最高裁判所のすぐ近くにあるカフェである。ヤンゴンの物価を考えればそこそこ高い価格ではあるが、英語も通じるしカードも使えるので、観光客が初めて行くには最適の店かもしれない。
さて、この後、写真はこの記事トップで使った黄金の寺院シュエダゴン・パゴダを撮ったもの除けば、もう帰国の空港までとんでしまう。第2ターミナルのチェックインカウンターだ。写真中央手前の青いサインボードがマレーシア航空のビジネスクラスカウンターの案内である。
チェックインを終え、カウンターに向かって左手にある階段で2階に向かうと、その正面が出国審査場、抜けてすぐ左手がラウンジである。
ラウンジはご覧の通りの小さなもので収容人数もたかがしれているが、ターミナル2を使う航空会社もすでに少なく、余程のことがない限り空いているのであろう。食事も一通りはあり、ミャンマービールが置いてあったり、いちばん奥のカウンターで注文を受けてから珈琲を入れてくれたりと、サービスは決して悪くないラウンジであった。
かくして初めてのミャンマー滞在はあっという間に終わった。東南アジア最後の秘境などと言われるミャンマーであり、実際、外国人の立ち入りが制限されている地域も多いのだが、少なくともヤンゴンを旅する限りでは、国際ブランドのチェーン店を見かけないことを除けば、東南アジアの地方都市とそんなに代わりはしない。あるいは、10年か20年ほど前のバンコクやホーチミンシティといった感じか。つまり、十分に快適な滞在が可能だということである。
今回の滞在と前後して空港と中心街を結ぶシャトルバスが運行を開始、ターミナル2を使うマレーシア航空やキャセイパシフィック航空も順次ターミナル1へ移動、秋からはひとまず1年間は観光ビザ不要と、状況が大きく変わりつつあり、ぜひ、また訪れてみたい国が増えた。