ビジネスクラスでは搭乗客を名前で呼ぶ
マレーシア航空のビジネスクラスではキャビンクルーが搭乗客を名前で呼んでくれる。JALだと国際線のプレエコや国内線ファーストクラスでも同様のサービスがある。別にお忍びの身などではないこちらとしては、このような特別扱いされている感を与えてくれるサービスは大歓迎である。さすがは客商売、乗客の自尊心をくすぐる術を心得ているといったところか。
さて、ヤンゴンからクアラルンプールに戻る機内でのこと、そのとき、担当してくれたキャビンクルーさんが私のことを「さん」付けで呼んでくれるのだが、それが舌っ足らずな感じでとても微笑ましかった。
日本語は難しい?
世界の言語には様々な発音があり、母語話者にとっては当たり前のものでも、そうでない者には難しい音というものがある。物理的に人間に発することが困難な音は、そもそも言語の音として採用されることがない。したがって、あくまでも慣れの問題でしかないのだが、大人になってしまってからでは習得の困難な音も少なくない。
日本語にもそういう音がいくつかあるし、日本人にとって困難な音ももちろんある。これは日本語は難しいというような一般論ではない。そももそ、日本語は世界中の言語の中で見てみれば、特別に難しくもなければ易しくもない普通の言葉である。文法的にもよく見受けられる珍しくない項目が多い。
総論としては上に書いたとおりであるが、日本語にはいくつかの限られた言語の母語話者以外には弁別困難、つまり、世界的に見ても珍しい部類の音韻特徴がいくつかある。その代表例が硬口蓋化子音と同一の母音連続である。そして、筆者の名前にはその両方がダブルで入っている。日本語がそこそこ堪能な外国人でも、まず初見でいきなり正しく発音できることなどないという、日本語ならではの発音が続く外国人泣かせの名前なのである。
ギャップ萌?
ヤンゴンからのフライト以外でも、もちろん、キャビンクルーさんは名前で呼んでくれたが、普通はMr/Mrsなどを敬称として使うので、全体として英語化されてしまって、筆者の名前の発音がおかしくても当たり前という印象しか受けない。
それに対して、日本人をさん付けで呼ぶというのは、比較的無難な日本人に対する敬称として(固すぎもせず、無礼にもならず)、特にアジア圏ではよくあることで、ヤンゴン線のキャビンクルーさんもそこの発音は手慣れたものだった。特別に難しい音というのもないし。それだけに余計に発音しづらい筆者の名前の部分とのギャップがあった。これもひとつのギャップ萌というやつであろうか。